前回の続きです。
第十六章: 「美人ばかりの異世界、その秘密とは?」
「なあ……なんか、この世界ってやたら美人が多くないか?」
俺はふと、そんな疑問を抱いた。
王宮に仕える侍女、城下町の商人、酒場の看板娘……どこを見ても、レベルの高い美人が多すぎる。
「普通の街なら、もっとこう……普通の人とか、おばちゃんとかがいるはずだよな?」
俺の疑問に、隣で紅茶を楽しんでいた女王エルヴィアはクスリと笑う。
「ふむ。確かに、お前の目にはそう映るだろうな」
「ってことは、やっぱり何か理由があるのか?」
「当然だ。この国に美人が多いのには、いくつかの“理由”がある」
「……聞かせてくれ」
するとエルヴィアは、俺の顎をそっと持ち上げ、微笑んだ。
「では、特別に教えてやろう……お前が、この美しい世界にふさわしい男であることを証明するためにな」
「ちょっ、なぜ急に色気を出してくる!?」
◆ 1. 「美人が生まれやすい血統管理」
「まず一つ目の理由は、“貴族文化”によるものだ」
「貴族文化?」
「この国では、貴族たちが“美しさ”を重視する傾向がある。長年の婚姻政策によって、美しい血統が維持されているのだ」
つまり、貴族社会では単なる地位や財産だけでなく、美しさそのものも価値として扱われるということらしい。
「たとえば、王族や貴族の結婚においては、“容姿”が重要な選考基準となることが多い。これが長年繰り返された結果、国全体の“平均的な美しさ”が上がったのだ」
「なるほど……異世界の貴族って、そんなところまでこだわってるのか……」
「ふふっ、余の美しさも、その証の一つというわけだ」
「いや、お前は確かに綺麗だけど、それでドヤ顔するのはどうかと思うぞ!?」
◆ 2. 「魔法による美容効果」
「次に考えられるのは、“魔法”による影響だな」
「魔法が関係あるのか?」
「そうだ。この世界では、魔力が多い者ほど若々しく、美しい容姿を維持しやすい」
「……待てよ、それってつまり、魔法使いほど美人が多いってことか?」
「その通りだ。例えば、宮廷魔術師の女性たちは、皆揃って美しいだろう?」
そう言われて思い返してみると、たしかに王宮の魔術師たちは、どこか神秘的で整った容姿をしていた。
「長年魔法を扱う者は、魔力の流れが体の活性化を促し、老化を遅らせる効果もある。だから、魔術師や貴族階級の者は、美しさを長く保つことができるのだ」
「……じゃあ、おばあちゃん魔術師とかって、ほとんどいないのか?」
「ふふ、それは極端だがな。強大な魔法を使う者ほど、長く美しさを保てる。だから、お前が見ている女性たちは、実際の年齢より若く見えるかもしれんな」
「……魔法、すげぇ……」
◆ 3. 「キス文化による美意識の向上」
「そして、もう一つ大きな理由がある。それは、“キス文化”そのものだ」
「……は?」
「よく考えてみろ。この世界では、異性との挨拶がキスという文化が根付いているのだぞ?」
「まあ、そうだけど……それが何か?」
「お前は、キスをする相手に対して、最低限の“身だしなみ”を気にしないか?」
「……!!」
言われてみれば、確かにそうだ。
俺も異世界に来てからというもの、毎日誰かとキスをしている。そのたびに「ちゃんと歯を磨いたか」「口臭は大丈夫か」「肌荒れしてないか」といったことを意識するようになっていた。
「この文化が続く限り、女性たちは常に“美しくあろう”とするのが当たり前になる。そして、それは“美人の割合が増える”ことにもつながるのだ」
「つまり……美しさはキス文化によって維持されている!?」
「ふむ、よく分かったようだな」
「おいおい、この世界のキス、想像以上に重要な役割を果たしてるじゃねぇか……!」
◆ 4. 「美容ポーションと錬金術」
「最後の理由として、“錬金術”の発展も関係している」
「錬金術?」
「この国には、“美容ポーション”と呼ばれる秘薬が存在する」
「なんだそれ、完全にチートアイテムじゃねぇか!」
「ふふ、効果は絶大だぞ。肌を整え、シワを防ぎ、髪のツヤを保つ……貴族や王族だけでなく、商人や一般市民も愛用している」
「そんな便利なものがあるなら、そりゃ美人も増えるわ……」
「もちろん、定期的に摂取しないと効果は薄れるがな。だが、特に裕福な者ほど、このポーションを日常的に使っている」
「……もう、美人が多いのも納得だわ」
◆ 俺の結論:「この世界の美人率、異常すぎる」
① 貴族文化による血統の影響
② 魔法が美しさを保つ作用を持っている
③ キス文化による美意識の向上
④ 美容ポーションや錬金術の発展
……これだけの要素が揃ってたら、そりゃあ美人ばかりの世界になるわけだ。
「どうだ、納得したか?」
「いや、すげぇわ……」
「ふふっ、では最後に“実証”してみるか?」
「実証?」
エルヴィアは、俺の頬にそっと手を添え、ゆっくりと唇を近づけてくる。
「お前が、この美しい世界にふさわしい存在であるか……今ここで確かめてやろう」
「ま、待て待て待て……!!」
「んっ……♡」
――こうして、俺はまたこの異世界の“美しさ”を実感させられることになったのだった……!!
第十七章: 「女王エルヴィアの仕事とは?」
「なあ、エルヴィアって普段何してるんだ?」
ある日、ふと疑問に思った俺は、王宮の特別顧問室で紅茶を飲むエルヴィアに尋ねた。
「ふむ、そういえば貴様には詳しく話していなかったな」
エルヴィアはティーカップを置き、ゆっくりと俺を見つめる。
「では、今日は特別に“女王の一日”をお前に見せてやろう」
「えっ、そんな簡単に見学していいのか?」
「もちろんだ。貴様は特別顧問、つまり余の右腕なのだからな」
「えぇ……右腕扱いされるほど仕事してる自覚ないんだけど……」
「ふふ、では行くぞ」
こうして、俺は女王エルヴィアの“仕事”を見学することになった。
◆ 7:00 AM 〜 女王の朝の目覚め
「セイジ、余の一日はここから始まる」
俺は朝早く、エルヴィアの私室へ案内された。
「おはようございます、陛下」
「ふぁ……おはよう、セイジ……」
なんと、エルヴィアは寝起きのままベッドの上で俺を出迎えた。
(うわ……めちゃくちゃ色っぽい……!)
寝間着姿のまま、無防備な状態で、俺を見つめるエルヴィア。
「さて、朝の挨拶だ」
「えっ?」
「当然だろう? 夫婦でも恋人でも、朝のキスは基本だ」
「いや、俺たちまだ夫婦じゃねえし!?」
「……ならば、いずれ夫になる者としての予行演習だ」
そう言って、エルヴィアはゆっくりと俺に唇を重ねてきた。
「んっ……♡」
(朝から濃厚すぎるって!!)
◆ 8:00 AM 〜 女王の朝会議
「さて、仕事を始めるぞ」
エルヴィアは美しいドレスに身を包み、王宮の会議室へと向かう。
そこでは、王国の重要人物たちが待っていた。
「では、本日の政務を始める」
エルヴィアは堂々とした態度で、会議を進める。
内容は――
- 税制の見直し
- 新しい街道の整備
- 近隣諸国との外交問題
- 軍備拡張の提案 ……と、めちゃくちゃ本格的な政治の話ばかりだった。
(思ってたより、めちゃくちゃちゃんと仕事してる!!)
「ふむ、ではこれで決定とする。皆の健闘を期待しているぞ」
「「はっ!」」
その威厳ある姿に、俺は改めてエルヴィアが王国の絶対的な支配者であることを実感した。
◆ 10:00 AM 〜 貴族との謁見
「さて、次は貴族どもの相手だ」
エルヴィアは王宮の大広間で、各地の貴族たちと対話を行う。
「陛下、我が領地の水利施設の改修に資金援助をお願いしたく……」
「ほう、では具体的な計画を示せ」
「はっ! こちらに資料を……!」
貴族たちが様々な要望を持ち込んでくるが、エルヴィアは冷静に審査し、的確な判断を下していく。
(すげぇ……こういう仕事も全部自分でやってるのか)
「セイジ、お前も見ておけ。この国を動かすとは、こういうことだ」
「お、おう……」
俺は圧倒されながらも、女王の仕事ぶりをしっかりと目に焼き付けた。
◆ 1:00 PM 〜 王宮の視察
昼食を終えた後、エルヴィアは王宮内の施設を視察する。
- 訓練場 では騎士団の動きをチェック。
- 魔法研究所 では新しい魔導技術について報告を受ける。
- 王立学園 では未来の人材育成について議論。
「陛下、魔力効率を向上させる新しい術式が完成しました!」
「ほう、実演してみよ」
「はっ!」
(うお……こうやって新技術が国に取り入れられていくんだな……)
エルヴィアは王国の全てを把握し、指示を出し続けている。
(こんなハードな仕事を毎日こなしてるのか……すげぇ……)
◆ 6:00 PM 〜 夜の政務と特別時間
「さて、夜の時間だな」
エルヴィアは夕食後も、書類に目を通しながら仕事を続ける。
「ふぅ……」
「大丈夫か?」
「ふむ、少し疲れたな」
俺はそんな彼女の肩をそっと揉んだ。
「ん……気持ちいい……」
(なんか、こういう普通のやり取りがあると、ただの王と臣下じゃなくて、もっと近しい関係って感じがするな……)
すると、エルヴィアが俺の手を取り、微笑んだ。
「……セイジ、お前がいてくれて、よかった」
「……え?」
「余はこの国の王である前に、一人の女だ。こうしてお前といる時間が……心地よい」
「……エルヴィア……」
エルヴィアはそっと俺の頬を撫でると、静かに唇を重ねた。
「んっ……♡」
(……まったく、こいつはいつでもキスが絡むんだからな)
でも、不思議と嫌じゃない。
むしろ、エルヴィアの重責を思えば、俺がこの時間くらいは支えてやってもいいのかもしれない。
◆ まとめ
- エルヴィアは、王国の政治・経済・軍事をすべて指揮している。
- 国の運営だけでなく、貴族や騎士団、学者たちとの交流も大切な仕事。
- 一日の大半を政務に費やし、夜になっても仕事をしている。
- 俺との時間が、エルヴィアにとっての“癒し”になっているらしい。
(……女王って想像以上に大変な仕事なんだな)
俺はこの日、改めてエルヴィアのことを尊敬すると同時に――
「……この国の未来、俺ももうちょっと真剣に考えた方がいいのかもな……」
そんなことを、ぼんやりと考え始めていた。
第十八章: 「これはただの既成事実……じゃない?」
「なあ、セイジ」
執務室で書類整理をしていたエルヴィアが、ふと顔を上げて俺を見た。
「なんだ?」
「今日の政務はここまでにしよう。余はお前と特別な時間を過ごしたい」
「……いや、なんでそんな色っぽい言い方するんだよ」
俺は思わずツッコミを入れながらも、立ち上がった。最近、エルヴィアは仕事の合間に俺と過ごす時間を必ず作るようになっている。
最初は「特別顧問だから」という理由で付き合っていたが……
(……俺、エルヴィアといるのが当たり前になってきてるな)
エルヴィアの横に座ると、彼女は優雅に微笑みながら俺の手を握る。
「セイジ、今日もよく働いたな」
「いや、お前のほうがずっと働いてただろ。俺なんてほぼ付き添いだったし……」
「そんなことはない。お前がそばにいるだけで、余は安心する」
「……そっか」
俺はエルヴィアの手の温もりを感じながら、どこか落ち着いた気分になった。
◆ 既成事実としての関係
思えば、俺とエルヴィアの関係は最初から妙なものだった。
- 初対面の時点で、女王との“ディープキス”を交わしてしまった。
- その結果、国中で「女王の寵愛を受ける男」として認識されてしまった。
- 気づけば、エルヴィアと過ごす時間が増え、仕事でも生活でも共にいるのが普通になった。
「……これ、完全に夫婦みたいなもんじゃないか?」
そう思う瞬間は何度もあった。
でも、俺はずっと「これは既成事実だから」と割り切っていた。
あくまで流れでそうなっただけ。
周りが「女王の相手」として俺を扱うから、俺も受け入れているだけ。
――そう、思っていた。
◆ 心が伴っていることに気づく瞬間
「セイジ、何を考えている?」
「えっ?」
気づけば、エルヴィアがじっと俺を見つめていた。
「お前、最近考え込むことが増えたな」
「……まあ、な」
俺は少し息を吐いて、エルヴィアを見た。
(……この顔を見るのも、もう何度目だろう?)
自信に満ちた表情。王としての威厳を持ちながらも、俺の前ではどこか柔らかくなる瞳。
こんなに美人で、こんなに強くて、それでいて俺の前ではちゃんと“素”を見せてくれる。
「なあ、エルヴィア……」
「なんだ?」
「お前ってさ……なんで俺を“選んだ”んだ?」
「ふふ、今さらか?」
エルヴィアはクスリと笑い、俺の頬にそっと手を添える。
「理由など単純だ。余は、お前のことが好きだからだよ、セイジ。」
「っ……!」
その言葉を聞いた瞬間、心臓が跳ねた。
(えっ……俺、今、めちゃくちゃドキッとしたんだけど?)
エルヴィアが俺を好いていることは、たぶん前から分かっていた。
でも、俺はそれをどこかで「関係がそうなっただけ」と片付けていた。
しかし――
(俺……エルヴィアのことが、好きなんじゃねぇのか?)
今まで「女王と特別顧問」という関係だと割り切っていた。
でも、それならなぜ俺は、彼女の仕草ひとつひとつにドキドキするんだ?
彼女の笑顔を見ると、なんでこんなに安心するんだ?
彼女が疲れていたら、なんで俺は無意識に「支えなきゃ」と思うんだ?
(これ、もう完全に……)
「セイジ?」
エルヴィアが不思議そうに俺の顔を覗き込んでくる。
その無防備な表情を見た瞬間――
「……っ」
俺は、もう逃げられないと悟った。
◆ ただの“関係”じゃなくて――
「エルヴィア」
「ん?」
俺は彼女の手を取り、真剣な目で見つめた。
「俺さ、今まで“既成事実だから”とか、“流れでこうなっただけ”とか思ってたんだけど……」
「……?」
「たぶん俺、お前のことが本気で好きだわ。」
そう口に出した瞬間、エルヴィアの瞳が大きく揺れた。
「……ふふっ」
そして、少しだけ驚いた後、彼女はゆっくりと微笑む。
「ようやく気づいたか」
「っ!」
「ずっと待っていたのだぞ? お前がそれを自覚するのを」
エルヴィアは俺の手を引き、自分の胸元に押し当てる。
――彼女の鼓動が、俺の手に伝わってきた。
「お前が特別だと分かった時から……この心は、お前のものだった」
甘く囁く声。
俺の手の甲にそっと触れる唇。
そして――
「セイジ、お前の気持ち、確かに受け取った」
次の瞬間、彼女は俺の唇をそっと奪った。
「んっ……♡」
今までと同じキスのはずなのに、今までとは全然違う。
既成事実でもなく、流れでもなく、ただの王と臣下でもない。
――俺とエルヴィアは、ここから本当の意味で始まるんだ。
そう思った瞬間、俺は彼女を抱き寄せ、今度は俺の方から深くキスをした。
「っ……ふ……♡」
こうして俺たちは、ようやく本当の意味で“両想い”になったのだった。
第十九章: 「最近のセイジのお仕事」
女王エルヴィアの「特別顧問」として、すっかり王宮に馴染んでしまった俺、セイジ。
最初は「流れでこうなっただけ」だったが、最近はなんかガチで仕事を任されるようになってきている。
「……これ、もう“ただのキス担当”じゃ済まなくね?」
そんな不安を抱えながらも、俺は今日も王宮で働いている。
◆ 1. 「外交キス担当」
「セイジ、今日は隣国の王女との会談だ」
「……あのさ、なんで俺がいるんだっけ?」
「決まっているだろう。この王国の“キスの象徴”だからだ。」
「なんだそのポジション!!?」
王国の外交では、異性間の挨拶としてキスが交わされるのが普通。
しかし、最近の流行で「男性がキスを拒む」のが一般的になってきたせいで、公式の場でも「誰がキスをするのか?」が問題になってきている。
「そこで、お前の出番だ」
「いや、なんで俺が“代理キス”する流れになってんの?」
「拒まない男として有名なお前が、外交の場で正式にキスを交わせば、それは“友好の証”となるのだ」
「そんなことってある!? てか、それもう“王家の顔”じゃん!!」
「ふふ、いずれはそうなるかもしれんな?」
「冗談じゃねえ!!」
とはいえ、実際のところ俺が外交の場でキスを交わすと、やたら友好ムードが高まるのも事実らしい。
「……おかしくね? キス一つで外交が円滑になるとか」
「文化というものは、時に人々の心を大きく動かすのだよ、セイジ」
「俺、もう軽い気持ちでキスできねえんだけど……」
◆ 2. 「騎士団のモチベーション管理」
「さて、次は騎士団の士気向上だ」
「……で、俺がやることは?」
「簡単だ。騎士たちに、激励のキスをして回ることだ」
「それ本当に俺の仕事!?」
「何を言っている? 騎士たちの中には、“キスを拒むのが流行だから”と意識しすぎて、逆にモチベーションが下がる者もいるのだ」
「いや、それもう“キスをしないストレス”で戦力低下する国ってヤバくね?」
「ふふ、だからこそお前が必要なのだ」
「……ってことは、俺、騎士たちにキスするの?」
「まさか。お前が女性騎士たちからキスを受けるのだ。」
「おおおおおい!? それ、俺だけ得してない!?」
「……何か問題があるか?」
「いや、普通はあるだろ!!」
「ならば、余が許可する。セイジは王国の“キスの象徴”なのだから、これは公務だ」
「なんでもアリじゃねえか!!!」
こうして、俺は日々、女性騎士たちから「激励のキス」を受けることになってしまった。
……でも、不思議と彼女たちは真剣な表情で、感謝の気持ちを込めてくるんだよな……。
「セイジ様のおかげで、今日も戦えます!」
「セイジ様に恥じないよう、王国のために剣を振るいます!」
「……いや、これ、どういう精神状態なの?」
「セイジ、お前はすでに国の象徴になりつつあるのだよ。」
「だからそれ重すぎるって!!」
◆ 3. 「王国のキス文化改革」
「セイジ、次はキス文化の見直しだ」
「もう俺に文化改革をやらせる気なの!?」
「当然だろう? お前が異世界から来た視点で、“この国のキス文化をより良い形にする”のだ」
「無茶振りすぎるだろ!!!」
とはいえ、実際問題、キス文化にもいくつかの課題がある。
- 「挨拶としてのキス」と「本気のキス」の線引きが曖昧。
- キスを拒む男性が増えた結果、一部の女性たちがフラストレーションを溜めている。
- 「キスをしない=冷たい」と見なされる風潮をどうにかしないと、外交にも影響が出る。
「……つまり、キス文化をちょっと“調整”しろってことか」
「その通りだ」
「いや、そんなの俺がどうこうできるわけ――」
「セイジ、余と“夫婦の誓い”を交わしたら、お前は正式に王となり、文化の改革権を得られるぞ?」
「待て待て待て!! それはさすがに話が飛躍しすぎだろ!!」
「ふふ、考えておくがいい」
――最近、エルヴィアが完全に俺を“次の王”として育てようとしている気がする。
(いや、俺、普通に“特別顧問”のつもりだったんだけど……!?)
◆ まとめ
最近の俺の仕事を整理すると――
✅ 外交キス担当 → 隣国の姫たちとキス外交
✅ 騎士団の士気向上 → 女性騎士たちにキスを受ける
✅ キス文化改革 → もはや俺にこの国の価値観が委ねられている
(いや、これ普通に“王の仕事”じゃね!?)
「セイジ、今日もよく働いたな」
政務を終えたエルヴィアが、俺の隣に座る。
「うん、俺、もう完全に王国の人間になっちゃってるな……」
「当然だ。だが、まだ足りぬ」
「え?」
「お前は、余と共にこの国を正式に導く者となるのだからな」
「……いや、だから俺、まだそのつもりじゃ――」
「んっ……♡」
「んむっ!? お、おい、こんな流れで……!」
「ふふ、余の王となるのだから、もう覚悟を決めるのだな」
(いや、もうこれ逃げられねえよな……!?)
――こうして俺は、今日も王国の“キスの象徴”として、仕事をこなしていくのだった。
第二十章: 「異世界で初めての風邪」
「……ん、なんかだるい」
朝、目を覚ました瞬間、俺は自分の体調が明らかにおかしいことに気づいた。
体が重い。喉が乾燥していて、頭もぼんやりする。
「まさか……風邪か?」
異世界に転生してからというもの、俺は一度も体調を崩したことがなかった。
だが、さすがに王宮でのハードな生活が続いたせいか、とうとう風邪をひいてしまったらしい。
「ちょっと休めば治るかな……」
そう思って再び布団に潜り込もうとした――その時。
「セイジ!!!」
扉が勢いよく開き、俺の名前を叫びながらエルヴィアが飛び込んできた。
「お、おい!? なんでそんなに焦ってんだ!?」
「当たり前だ!! 余の“特別顧問”が倒れるなど、一大事ではないか!」
「いや、大袈裟すぎるだろ……ただの風邪だって」
「何を言っている! 風邪とは恐ろしい病だぞ!!」
「えっ、まじで?」
◆ 異世界の“風邪”事情
「この世界では、風邪は単なる病ではない。長期間放置すれば命を落とすこともあるのだ」
「……うそだろ?」
「魔法や薬草の発展により、多くの病は治療可能だが、“風邪”は依然として完全な治療法がないのだ」
「いやいや、それ普通逆じゃね? なんで異世界で風邪がそんなにヤバいんだよ!」
「理由は単純。魔法やポーションは“魔力の流れ”に影響を与える治療法が多い。しかし、風邪は魔力とは関係なく感染するため、万能の治療法が存在しない」
「……なるほど。つまり、この世界では風邪は“魔法の効かない病”ってことか」
「その通りだ。そして、お前が風邪をひいたということは……」
エルヴィアは不安そうに俺の顔を覗き込んできた。
「……お前は、余とキスをするほどに親しい関係にあるのだぞ? 余に感染してしまうのではないか?」
「いや、そこ気にするの!? ていうか、今さら!?」
◆ 風邪をひいた時の“お世話”
「とにかく、お前には最高の看病を受けてもらう」
「そんな大げさな……」
「セイジが回復しなければ、余のキスを受ける者がいなくなるのだからな」
「……理由が完全にそっち!? 俺の健康よりキスの相手が大事なの!?」
しかし、エルヴィアはすでに行動に移っていた。
1. 体温チェック
「まずは体温を測るぞ」
「えっ、こっちに体温計とかあるの?」
「そんなものはない。余が直接確かめる。」
「……は?」
「こうすれば分かるだろう?」
そう言ってエルヴィアは俺の額に自分の額をくっつけた。
「っ……!? ち、近いって!!」
「ふむ……やはり熱いな」
俺の顔のほうが熱くなりそうなんだけど!?
2. 薬の準備
「さて、風邪には適切な薬が必要だ」
「まさか、お前が調合するのか?」
「当然だ」
エルヴィアは王宮専属の宮廷錬金術師を呼び、俺専用の薬を調合させた。
「……なんか、すげえ豪華なポーションができてるんだけど」
「当然だ。余の男に粗末な薬を使うわけにはいかぬ。」
「……いや、そういう特別待遇は正直ありがたいけど、もっと庶民的なやつでいいんだが」
「バカを言え、これは“女王の愛が込められた薬”だぞ?」
「なんかヤバそうなネーミングなんですけど!?」
3. 食事の介助
「風邪の時は栄養を摂らねばならぬ」
「いや、食欲ないし……」
「ならば、余が“あーん”して食べさせてやろう」
「えっ、まじで?」
エルヴィアはスプーンにスープをすくい、俺の口元に持ってくる。
「ほら、口を開けろ」
(え、これ……めちゃくちゃ恥ずかしくないか!?)
だが、俺がためらっていると、エルヴィアがニヤリと微笑んだ。
「お前が食べないなら、余が口移しで食べさせてやろうか?」
「いや、普通に食べます!!」
俺は慌ててスープを飲み込んだ。
……くそ、風邪ひいてるのに、心臓に悪いイベントが多すぎる……!!
◆ 風邪と看病、そして……
そんなふうに看病されながら、一日が過ぎていった。
エルヴィアが俺のそばを離れることはなく、ずっと世話を焼いてくれた。
「……お前、本当に暇じゃないのか?」
「バカを言え。お前が病に倒れている間、余は王としての務めよりも、お前を優先する」
「……」
エルヴィアは俺の手をそっと握る。
「セイジ、お前は余にとって、かけがえのない存在だ。だから、どんなことがあっても、お前を守る」
「……エルヴィア」
「だから、早く治せ。お前が元気にならねば、余が心配で夜も眠れぬ」
「……そんなこと言われたら、早く治さなきゃって思うだろ」
俺は微笑みながら、エルヴィアの手を握り返した。
風邪は確かに辛い。
でも、この異世界で初めての風邪は、少しだけ幸せなものだった。
◆ そして翌日……
翌朝、俺はすっかり体調を回復していた。
「……よし、もう大丈夫だ!」
「そうか、それは良かった」
「……お前のおかげだな、エルヴィア」
「ふふ、それならば、回復祝いをしようか?」
「え?」
エルヴィアは俺の顎をそっと持ち上げ、微笑んだ。
「“健康になったお祝いのキス”だ」
「……もう、どんな理由つけても結局キスするんだなお前は」
「当然だ」
そして、俺たちは今日も変わらず、甘いキスを交わした。
――異世界に転生してから初めての風邪は、こんなふうに“特別な思い出”になったのだった。
続く…
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